先日、イヤホンを購入された顧客より「商品が壊れている。交換するか、返品するので代金を返してほしい。」と言われました。

調べたところ、顧客が雨の日に落としたようで、水濡れが原因と判明しました。
そのため、当社としては「対応ができない」ことをお伝えしましたが、まったく聞き入れてくれず、お店に居座り続けられてしまいました。

顧客側の落ち度が明白であり、自社に非がない場合のクレーム対応は、どのように行えばよいでしょうか。

会社において事実調査を行った結果、自社に落ち度がなく顧客側の過失により商品が壊れた事実が明らかになった場合には、顧客側の商品の交換や代金の返還要求は「不当クレーム」になります。

会社に非がない場合には、顧客側からの交換や返金等の要求に根拠がありません。

質問事例とは異なりますが、一定期間は理由がなくても返品を認めている場合もありますが、顧客側に合理的な理由のないまま、返品可能期間を過ぎてから返品を無理やりに求める場合も、「不当クレーム」になります。

会社は、このような不当クレームを拒否しても全く問題ありません。

それでも執拗に要求を求めてくる場合には、毅然として要求を拒否し、取引の断絶を図りましょう。
当該クレーマーは、悪質なクレーマーであり、会社として「顧客」として扱う必要はなく、「業務妨害者」として対応すべきです。

自社だけでの対応が難しい場合には、弁護士警察、または法的手続を活用するなどして、段階を上げて取引断絶を進めます。

より詳しく説明していきます。

(まとめ記事)弁護士が伝授【クレーム・クレーマー対応】悪質・不当要求と戦う指南書
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クレーム対応の解説記事をすべて網羅したまとめ記事です
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第1 クレーム対応の基本

1 自社に非がないクレームの具体例

自社に非がないにもかかわらず、執拗にクレームを述べる顧客が少なからずいます。
具体的には以下のような例が挙げられます。

  • 欠陥のない商品について交換や返金を要求する
  • 提供された商品やサービスに苦情を述べ、代金の支払いを拒絶する
  • 店員の態度が悪い、長く待たされた等を理由に減額や過剰なサービスを要求する

会社に非がない場合には、会社は顧客からの要求に応じる必要はありません。
ただ、顧客サービスの一環として対応するためであったり、対応にあまりに難儀するがために、不当であることを認識しながらも、要求に応じてしまっている現実もあります。

総合的な経営判断として対応に応じる場合であっても、自社に非がないクレームを受けた場合の正しい対応法を知っておき、拒否する選択肢も念頭に置きながら、最終的な決断を下していただきたいと思います。

2 基本の流れはいつも一緒(事実調査からの正当性判断)

(対応の基本)クレームには、拒絶すべき「不当クレーム」がある

会社には、従業員を悪質なクレームから守る義務があります。

そのため、不当なクレームは「拒否しても良い」のではなく、業務妨害者として捉え、取引関係から遮断し、本来の業務に集中して就労できる環境を提供しなくてはなりません。

クレームには、正当クレームと不当クレームの2つがあることを知りましょう。
正当クレームには誠意をもって対応し、不当クレームには拒否し、法的に解決を図ります。
拒否すべき「不当クレーム」があることを知る

クレーム対応のルーティーン

クレームが発生した場合には、誠実に対応すべき正当クレームか、拒絶すべき不当クレームかの視点をもって対応にあたることが大切です。

この視点を持ちながら、①クレーム内容の把握、②事実調査、③正当・不当クレームの判別、④方針決定と具体的対応の、ルーティーン作業で進めます。

クレーム対応要領は、事実確認を行い、その事実関係に基づいてどのような責任を法的に負うかを検討し、それに対する顧客の要求を検討し、正当か不当なクレームと言い得るかの判断をします。
クレーム対応のフローは常に同じ

初期対応の留意点

事実関係を調査する前の、クレーム内容を把握する段階においては、まだ正当か不当かの区別をすることができません(なお、暴行、暴言、誹謗中傷、土下座要求などがあれば、その時点で不当クレームと判断すべきです)。

そのため、初期対応にあたっては、謝罪の姿勢を示しながらクレーマーの主張把握に努めます。

<謝罪のポイント>
  • 道義的な謝罪を効果的に利用する
  • 軽微な間違い説明不足は、速やかに謝罪して大丈夫です。
  • 謝罪は、ミスに対応した謝罪を行います(それで十分です
  • 謝罪を要求しているクレーマーの納得を得る必要はありません!!
    ⇒ 納得するか否かは主観面で、際限がない問題に付き合う必要はありません。

3 事実調査の重要性

設例のように、商品の交換や返金等の要求があった場合には、クレームの原因となっている事実の有無の確認を行うとともに、自社に落ち度があったか否かの判断が重要になります。

実際の対応にあたっては、まず、本当に自社にて購入が行われたものかどうか、初めて使った際には正常に動作したかどうか、どのような状況で利用して故障に至ったのか、故障後の作動状況、事前に取扱説明書を読んだかどうか、などを詳しく聴取します。

仮に自社に非がある場合には、債務不履行による損害賠償責任が発生し得ますし、顧客側からの契約解除も有効となります。
また、自社に非がない場合であっても、商品に欠陥があった場合には、商品の修補や代替物の引渡し(商品の交換)、代金の減額等で対応する必要があり、製造物責任として生命・身体・財産の損害に対する賠償義務が生じることもあります。

正当なクレームと悪質クレーム(不当なクレーム)を区別する基準として、要求内容と要求方法のいずれかにおいて相当性を欠いている場合をいう。
正当・不当クレームの判別基準

4 落ち度(過失)がない場合の基本的考え方

クレーム発生により、会社に非がない場合(法的根拠がない場合)には不当クレームと言えます。 会社に非がある(法的根拠がある場合)には、次に要求内容が正当か、要求態様(方法)が正当かを検討し、正当であれば正当クレームと言えます。 しかし、要求内容が著しく不当、または要求手段・態様(態度)が著しく不当の場合には、不当クレームというべきです。
不当クレームへの判断過程

商品やサービスに全く問題がない場合、つまり自社に非がない場合には、顧客側からのクレームは「不当クレーム」といえますので、要求には応じるべきではありません。

応じられない理由を丁寧に説明したうえで、「申し訳ありませんが、交換、返金はいたしかねます。」として、拒絶して問題ありません。

第2 不当なクレームに対する会社の姿勢

1 悪質クレーマーとは決別する必要

それでもなおも執拗に交換や返金を求めてくる場合は、悪質なクレーマーであり、会社にとっては業務妨害者になります。

顧客ではなく、「あなたは業務妨害者である。」として、取引関係からの断絶(店外への退去、入店拒否、連絡拒絶など)を図っていきます。

当初は、クレームが正当なものか悪質なものかが区別できませんので、謝罪の姿勢を示しつつ、要求内容を聴取します。 要求内容(言い分)を聴きながら、他の従業員の供述や証拠などから、要求内容、要求態様の正当性を判断します。 これにより不当クレーム(悪質クレーム)と判断できる場合には、毅然と拒否し、会話の平行線を作ります。 そして、堂々巡りを長時間にわたり繰り返しても仕方ないので、クロージングとして取引遮断へと向かいます。 この流れが、クレーム対応の全体像になります。
悪質クレームの取引遮断への流れ

2 会社の具体的な対応手順(毅然と対応)

取引拒絶の意思を明確に示す

具体的な対応手順は、下図に示すように、拒絶の意思を明確に表示し、交渉の余地がないことを繰り返し伝えます。

それでも、なおも執拗な態様である場合には、警察を呼ぶ弁護士に対応を一任する、法的手続に出ることを伝え、電話や窓口での対応は一切行わないことを宣言します。
仮に来訪や電話があっても、取り合わずに拒絶します。

平行線の作出をゴールに掲げます。 不当クレームの要求を毅然として拒否し、会話の堂々巡りを目指します。 その上で、会社として説明責任を果たしたならば、単に拒否を繰り返します。 これで会話の平行線の状態、つまり押し問答や堂々巡りとなっています。 この状態で収まらないクレーマーには、書面(警告文)を送付し、取引拒絶意思を明確に伝えます。 それでもなおも引下がらなければ、警察を呼び、かつ、仮処分や裁判などの法的手続へ移ります。
取引断絶を目指す会社の対応方針

✍ (参考)クレーマーとの拒絶法(例文)を解説しています

次なる段階は弁護士や警察、法的手続へ

アポのない不当要求、悪質クレームに対しては、警告文を送付、警察署へ相談、仮処分の申立て、訴訟提起という手段で対抗しましょう。
執拗なクレーマーには次なる手段を執ります

取引拒絶を宣言する最も効果的な方法は、書面による伝達(警告文の送付)です。

特に内容証明郵便を利用することで、拒絶の意思を伝えたことが客観的に明白となります。
弁護士への委任をしない場合であっても、自社で内容証明郵便を活用して取引拒絶を明言します。

ただ、現場から離れないクレーマーに対しては、物理的に強制的に排除する必要がありますので、警察との連携は必要になります。

また、書面送付で終わらない場合には、弁護士に一任したり、法的手続に出ます。
執拗な態様に対しては、仮処分の活用が最も迅速な法的手続となります。

3 (会社の裁量)「顧客サービス」としての対応余地

以上のように、自社に非がない場合には、不当なクレームとなりますので、基本的に交換や返金要求に応じてはいけません。

もっとも、会社によっては、または事案によっては、裁量の範囲内である程度の対応をすることはあり得るものです。
顧客やリピーターを獲得するためであったり、クレーム対応に割かれる時間や労力等の兼ね合いがありますので、顧客サービスの一環としての対応を否定されるものではありません。

ご留意いただきたいことは、顧客サービスの一環として積極的な対応をする場合であっても、その裁量の範囲をルール化し、その範囲内でのサービスに留めるべき点です。
悪質なクレーマーであればあるほど、企業のサービスに付け込んでさらなる不当なクレームをすることも十分に想定できます。

ある顧客に対してサービスを行った場合、他の顧客から同様のクレームがあった場合には、同様のサービスを求められる点を認識しましょう。
特にSNSが普及している現在、顧客平等主義は強く求められます。

顧客平等主義の観点から、可能な範囲でのサービス対応をルール化しておくと、現場にいる従業員も対応しやすいですね。

✍ 顧客サービスを行う場合の留意事項

「顧客平等主義」

●相手方の要求に応じなければならない法的義務があるか?

 YES → 応じなければならない
 NO  → 必ずしも応じなくても良い

すべての者に、同様の対応・サービスをできるか?

 YES → 応じても良い。応じるのが望ましい。
 NO  → 応じてはいけない。

第3 弁護士の積極的な活用と費用(当事務所の場合)

この記事においては、自社に非がない場合の対応を解説しました。
自社に非がないと断言できる場合はよいですが、自社に落ち度があるかどうかの判断に迷う場面は、意外に少なくないと思います。

また、いつでもすぐに弁護士に対応を一任できると、従業員だけでなく、会社も安心して通常業務に専念できると思います。

そのため、事件ごとに弁護士を介入させることも有用ですが、定額の顧問契約を推奨していますので、参考にしていただければと思います。

1 任意交渉(窓口となり、交渉を全て一任できます)

単発でご依頼いただくパターンと、1年間の顧問契約をご契約いただくパターンをお選びいただけます。
顧問契約を含めた場合には、総額では高い分、当該事件以外のご相談も含めて対応致します。

クレーム対応における当事務所の弁護士費用。
任意交渉を行う場合。
弁護士を窓口として交渉を行うケースでは、単発と顧問契約の締結の2パターンを想定。
当事務所のクレーム対応の弁護士費用(総額
【参考】 中小零細企業に法務部を!経営を加速させる顧問弁護士の使い方とは?
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売上を拡大したい中小企業経営者の方へ ~ メール、書類、顧客対応の悩みから解放されませんか?
https://ik-law.jp/blog/komon_lawyer/

クレーム対応代行特化プラン

弁護士への委任を個々の案件ごとではなく、予算を設定して毎月定額化させたい場合に、特化プランを準備しています。
目安として毎月3件程度を上限に想定していますが、個別相談いたします。

毎月定期的にクレーム対応の代行を依頼したい事業者の方に向けて、毎月22万円にて1年間の対応をする特化プランを用意しました。
定期的にクレーム対応代行を依頼したい事業者の方に

2 仮処分、訴訟等の法的手続

クレーム対応において、仮処分や訴訟手続などの法的手続対応を要するケースはほとんどありませんが、稀に法的対応まで必要となるケースがあります。

法的対応を行う場合には、個別見積もりをいたしますが、以下の費用感を想定いただければと思います。

当事務所におけるクレーム対応の弁護士費用。 面談強要禁止、来訪禁止、接触禁止、架電禁止、撮影禁止仮処分の場合、定額(総額)税込みで99万円となっています。 街宣活動禁止の仮処分の場合は、132万円の定額(税込総額)です。
クレーム対応における当事務所の弁護士費用(総額

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