Question
ハードクレームの中に、「自宅に謝りに来い!」と言われることがあります。
このような要求に対して、どこまで応じるべきでしょうか?
また、自宅へ訪問する際には、どのようなことに注意すべきでしょうか?
Answer
まず、クレーム対応にあたっては、そのクレームが真摯に対応すべき正当クレームか、相手にするべきではない不当クレームかの検討を行います。
次に、事実関係等を調査した上で正当クレームと判断でき、かつ、その被害の程度が軽くない場合には、適切な謝罪を行うために、自宅へ赴くことも必要といえます。
ただ、自宅に訪問する行為には、長時間拘束されたり、過大な要求でもその場の雰囲気等に押されて受け容れてしまうリスクがありますので、必ず複数名で訪問し、会話は録音をするようにしてください。
より詳しい説明をしていきます。
第1 クレーム対応の基本的な対応要領
クレーム対応においては、顧客の主張を聞き事実関係を調査しながら、正当なクレームか不当なクレームかの判断をします。
どのようなクレームにおいても、この流れはルーティーンとして行います。
そして、正当クレームには真摯に対応する一方、不当クレームに対しては断固として拒否し、関係遮断を求めることがクレーム対応の基本です。
詳細は、以下の参考記事をご覧ください。
✍ (参考)クレームに対する基本的な考え方を解説しています
第2 自宅へ謝罪に赴くことの検討
1 「謝罪」の法律的な検討
会社の提供する商品やサービスに欠陥や落ち度があった場合には、適切な謝罪を行う必要があります。
適切な謝罪とは、通常は口頭での謝罪と必要な範囲での金銭賠償や商品の交換等で足り、自宅への訪問まで必要なわけではありません。
そのため、謝罪に伴う自宅訪問については、あくまでも道義的な観点から、その可否を検討すべきです。
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謝罪文を書けと強要するクレーマー:カスハラ被害の防止へ2 自宅を訪問することで想定されるリスク
自宅を中心に、クレーマーの指定する場所に赴くことは、自社内で対応するのと比べてリスクが高い行為となります。
具体的には、以下のリスクがあることを理解しましょう。
複数名で訪問することと、訪問の際に録音をすることで、リスクを大きく回避できます。
長時間にわたり拘束されるリスク
複数名で訪問することで、長時間にわたる拘束をされるリスクは軽減することが可能です。
ただ、会社に落ち度があって被害も生じているような場合には、大声を出されたり詰問されることで、帰るべきタイミングを作れず、軟禁状態となってしまう恐れがあります。
訪問後には、会社から定期的に担当者の携帯へ連絡するなど、組織的に対応することが必要です。
勢いに押され、不当な要求を受け容れてしまうリスク
クレーマーからの脅迫的な言動(雰囲気)に恐怖を感じたり、長時間の拘束から脱したいと思うことで、その場を取り繕うために要求を受け容れてしまうリスクが想定できます。
このような言動を行ってしまうと、少なくとも「会社は責任を認めた。」とクレーマーを勢いづかせてしまうことになります。
下手に言質を取られないようにするためにも、訪問先では判断せずに、「検討して連絡いたします。」と予め対応方針を確認しあうことが大切です。
訪問がなかったと言いがかりをつけられるリスク
約束の日時にあえて留守にしておき、後で「自宅に来なかった。」、「連絡もなしに約束を破った。」などと言いがかりをつけられるリスクが想定できます。
変な火種を作らないためにも、約束の日時については、メールなどの客観的な証拠で確認できるようにしておき、さらに当日は携帯電話から架電したスクリーンショットを残しておくなどの対策を講じておきます。
物を壊すなどの言いがかりをつけられるリスク
たとえば、座布団を勧められたので座ったところ、下に隠されていた眼鏡を壊してしまい、言いがかりをつけられた実例があります。
このような意図的に仕組まれたものでなくても、つまづいたり、ぶつかるなどにより、クレーマーの自宅にある品物に損壊を与えてしまうリスクを忘れてはなりません。
特に慎重な行動を心がけましょう。
3 自宅を訪問すべきかの判断基準
このように、自宅に赴く行為には、相応のリスクがあります。
また、謝罪をするためであっても、法律上の要請ではなく道義的な観点から検討されるべき問題です。
そうすると、自宅を訪問すべき場合とは、会社の提供する商品やサービスに欠陥や落ち度があることが確認できる場合で、かつ、自宅に赴いて謝罪をすることが適切といえるほど、被害も相応に生じている場合といえます。
このような場合は、事実関係の調査も終わっており、会社が適切な謝罪の実践として、明確に謝罪を行う目的が明らかといえます。
また、このような場合だけでなく、クレーマーの主張内容について検討するため、事実関係の調査のために自宅に赴くことが必要となる場合も想定できます。
たとえば、購入品が家電などの大型な物で持ち運びが困難な物や、クレーマーの自宅環境での利用が予定されている場合などがあります。
事実関係の調査を行うために、自宅訪問をする必要がある場合には、想定されるリスクに備えながら、訪問をするべきです。
そうすると、自宅に赴くべきなのは、明確に謝罪を目的として訪問する場合か、事実関係を調査をするために必要がある場合と、類型化することができます。
第3 自宅へ謝罪に赴くときに留意したいこと
1 自宅に赴くにあたっての姿勢
明確に謝罪する場合
会社の落ち度によって被害を与えてしまった場合には、誠意をもって謝罪をすることが大切です。
ただし、被害者の態度が被害の程度と比べて相当性を逸脱している場合や、過大な要求をしたり、長時間にわたり謝罪を求める場合などは、このような態度をもって不当要求に変化したものといえますので、謝罪を打ち切ることも念頭に置いておきましょう。
事実関係等を調査する場合
事実関係が十分に調査できていないなどの場合には、不用意に謝罪の言葉を述べてしまうのは、責任を認めたものと捉えられる恐れがあるため、注意が必要です。
「お忙しいところ、お時間を頂戴しまして、申し訳ありません。」など、訪問対応などのお手間をかけたことへの謝罪に留めておき、責任問題については明言を避けておきます。
2 複数名で訪問をすること
訪問をする場合には、1名で訪問することは絶対に避け、複数名で訪れるようにします。
特に悪質なクレーマーであればあるほど、自宅訪問をする場合のリスクが高いものとなります。
仮に自宅訪問をせざるを得ないほどの落ち度が会社にある(明確に謝罪する)場合であっても、複数名で訪問することで、安心感が生まれるだけでなく、対応のやり取りを証拠化するなど、果たすべき役割があります。
3 証拠収集を行い、協力を要請すること
取引に関連する資料は、重要な証拠資料となりますので、許可を得た上で、預かって持って帰りましょう。
具体的には、購入物やレシート、お怪我をされた場合には診断書や該当部位の写真撮影などが想定されます。
なお、相手が求めた場合には、写真やコピーを渡します。
4 さいごに
事実関係を調査するために、自宅に訪問せざるを得ない場合もあるでしょう。
大切なことは、訪問する目的を明確にした上で、訪問するリスクを理解し、備えをもって臨むことです。
特に、複数名での訪問と録音準備は、必須といっても過言ではありません。
第4 クレーム対応は日常の備えから ⇒ 顧問弁護士への相談
1 当事務所の考え
不当なクレーム、悪質なクレーマーから会社を守るためには、会社が一丸となり毅然とした対応を行う体制構築が必要不可欠です。
そのためには、継続的な支援が必要不可欠なものと考えており、顧問契約の締結をお願いしています。
【クレーム対応基本プランの提供サービス】
クレーム対応案件における弁護士の活用法は、対応が困難、もしくは判断に迷う事例について、随時ご相談を行います。
そして、定期的に検討会を行い、対応の是非と同種事例への対応策を打合せします。
その上で、これまでに発生した事例に対する検証を行い、それを基にした対応マニュアルを整備します。
法的手続を除いて代理人としての窓口対応業務までも含めていますので、弁護士費用を予算化できますし、コスパ良く外注できる存在としてご活用いただけます。
1~2年の継続により、クレーム対応業務を内製化していき、通常の顧問契約にダウンサイジングしていくことも可能です。
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売上を上げるツールとしての顧問弁護士活用法!2 弁護士費用と提供サービスプラン
クレーム対応:基本プラン(6ヵ月~)
クレーム対応:代行特化プラン
弁護士への委任を個々の案件ごとではなく、予算を設定して毎月定額化させたい場合に、特化プランを準備しています。
目安として毎月3件程度を上限に想定していますが、個別相談いたします。
民事全般:基本プラン
上記は、クレーム対応用の特別プランですが、事件対応の一般的なプランもご利用いただけます。
この場合、毎月5万円~の月額顧問料(6ヵ月~)に、以下の事件対応費用(着手金+報酬金)となります。
ご相談予約フォーム
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お問い合わせ
ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom相談も対応しておりますので、全国対応しております。
お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
相談時に必要なもの
事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。
- 相談内容の要点をまとめていたメモ
- ご相談に関する資料や書類
ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)
法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。
問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。
※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。
ご依頼
当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。
問題解決へ
事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。
示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。
終了
委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。
クレーム・カスハラ対応には、会社のトップが不当クレームに対して毅然と対応する姿勢を明確にする必要があります。
大きなストレスやうっぷんが溜まっている社会であっても、会社を悪質クレーマーから守る戦いを、専門家としてサポートします。