弁護士の仕事には、契約書の作成・チェックなどの予防法務もありますが、実際にトラブルが発生した際の解決も担います。
借地権は、何かと敬遠されがちですが、どのようなトラブルがあるかを知っておくことで、紛争を予防しやすいだけでなく、借地権に対する漠然とした恐怖心も低減できるものと思います。
実際に借地権のトラブルを解決する専門家の視点から、借地権で発生しやすいトラブルを網羅的に解説します。
事前に起こりがちなトラブルを知ることで、転ばぬ先の杖となってくれることを企図しました。
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第1 借地権設定時によくあるトラブル
新たに借地権を設定する場合には、借地条件についての協議がなされ、合意に達した後に借地契約が締結されますので、主要な借地条件についてトラブルが顕在化することは多くありません。
問題は、後日協議することとして借地権を設定しながら、その協議が結局調わなかった場合があります。
建物所有であるのか(借地借家法を適用させるケースであるのか)を含めて、曖昧な点をできる限り残さないことが大切です。
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定期借地権とは?第2 契約継続中によくあるトラブル
1 地代の争い(増減請求)
契約時からの期間の経過によって、地価・物価の上昇(下落)や近傍類似の地代に比較して不相当となったときには、地主・借地人は地代の増減請求ができます。
地代の争いが生じた場合には、最終的には裁判によって解決(地代増減請求の訴え)を図ることができますが、まずは調停を申立てる必要があります。
専門家を交えた調停委員会において、当事者の合意により早期かつ円満に解決することが企図されています。
地代の増減請求では、継続賃料(継続地代)と、新たに借地契約を締結する場合の新規賃料(新規賃料)との、違いを知っておきましょう。
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賃料の増減請求のポイントと手続の流れ2 借地非訟手続~賃借権の譲渡や借地条件の変更など
借地人が適法に行うためには、地主の承諾が必要となる行為があります。
具体的には、借地権を譲渡・転貸する場合、建物の種類・構造・規模・用途を制限する契約となっている場合に借地条件を変更する場合、増改築を制限する契約となっている場合に増改築を行いたい場合などが挙げられます。
もっとも、法律的には、地主が承諾をする義務はありませんので、承諾をしないこともできます。
そのため、長期間継続することを前提とする借地契約において、地主の承諾が得られないと借地人にとって非常に不都合となりますので、裁判所に地主に代わる許可を与える制度が作られました。
これが借地非訟手続です。
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借地非訟手続とは?借地非訟手続は、利用できる類型が決まっており、以下の類型で活用することが出来ます。
3 債務不履行の争い(契約解除)をめぐる争い
借地契約の債務不履行による解除が問題となる類型は、借地料(地代)の不払い、借地権の無断譲渡・転貸、借地条件の変更、増改築制限違反、用法違反、更新料の不払い、特約違反その他信頼関係の破壊等が考えられます。
ただ、借地契約のように長期間にわたる継続的な契約では、単に債務不履行の事実が発生しただけでは解除が認められず、その程度が当事者の信頼関係を破壊させるほどの違反が必要とされています。
些細な違反や一時的なもの、回復可能な場合などには、解除が認められません。
それぞれ債務不履行の内容に沿って概観していきます。
①借地料(地代)の不払い
借地料(地代)が全く支払われない場合、又は支払いがなされるものの遅延が繰り返される場合などが典型的です。
ざっくりしたイメージでは、半年程度の未払いが続くと解除が肯定される傾向があります。
借地人の視点からは、地代減額請求をした場合であっても、係争中は従前の地代を支払い続ける必要があることに注意が必要です。
相当賃料が決定するまでは、地主が相当と認めた地代を支払わないと、債務不履行解除されるおそれがあります。
②借地権(賃借権)の無断譲渡・転貸
借地権を譲渡・転貸しようとする場合、地主(土地所有者)の承諾を得ないと、無断譲渡・転貸となり、地主は借地権を解除することができます。
これに対して、借地人は譲渡等に地主の承諾が得られない場合には、裁判所に対して地主(賃貸人)の承諾に代わる許可の申立てをすることができます。
この場合、裁判所は相当な賃借権譲渡承諾料(いわゆる名義書換料)の支払いと引換えに、地主(賃貸人)の承諾に代わる許可をすることができます。
承諾料(名義書換料)は、一般に借地権価格の10%が目安とされます。
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借地権の譲渡・転貸と地主の承諾について③借地条件の変更
旧法借地権では、借地上の建物が堅固建物か非堅固建物かは重要な借地条件です。
新法借地権(借地借家法)では、建物の堅固、非堅固による区別は廃止されましたが、建物の種類、構造、規模、用途を制限する特約は有効で、重要な借地条件となっています。
そのため、借地人がこの約束と異なる建物を築造しようとする場合には、借地条件の変更について地主の承諾が必要となり、違反する場合には債務不履行解除されるおそれがあります。
借地条件の変更について当事者の協議が調わない場合には、借地人・地主のいずれからも裁判所に対して借地条件の変更を求めることができます。
裁判所が相当と認める場合には、借地条件の変更を許可し、条件変更料の支払いや、地代の変更などの処分を命じることができます。
条件変更料の1つの目安は、更地価格の10%程度とされます。
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【借地非訟】借地条件の変更④増改築の制限
借地契約において、建物の再築・増改築を禁止したり、制限したりする特約がある場合、当事者間で増改築や再築について話合いでの解決ができないときは、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求めることができます。
借地条件の変更とは、具体的な増改築行為か、抽象的な借地条件の変更かによって、区別されます。
承諾料の目安ですが、全面改築の場合で更地価格の3%程度とされています。
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【借地非訟】増改築の許可⑤用法違反
用法違反には、借地契約で定められた土地の使用方法に反する利用がなされた場合が挙げられます。
土地そのものの使用に関するものとしては、契約に反して土地の掘削、盛土や土地の現状を変更する行為などがあります。
また、築造される建物に関するものとして、建物の種類、構造を制限する特約に違反する場合が挙げられます。
⑥更新料の不払い
更新料については、法定更新の場合に地主は借地人に更新料を請求することができるか?また、更新料の支払合意があるにもかかわらず借地人が更新料を支払わない場合に、借地契約を解除できるか?が問題になりやすいです。
法定更新については、法定更新における更新料の支払合意がなければ、多くの裁判例において更新料の支払いを求めることはできないと判断されています。
更新料の不払いと借地契約の解除については、判例では更新料の支払が重要な要素となっているときには、契約を解除することができるとされています(最判昭59.4.20)。
解除事由になるかどうかは、更新料の合意の経緯、不払いの態様に照らして、信頼関係を破壊する重大な背信行為にあたることが必要とされている点には注意が必要です。
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借地権における「更新料」を詳しく解説します⑦特約違反・信頼関係の破壊等
借地契約締結に際して定められる特約については、旧借地法・借地借家法に照らし、個別具体的に有効性が判断されることになります。
たとえば、建物改築にあたり、存続期間を超える建物を築造しない旨の特約や、無催告解除特約などが例として挙げられます。
第3 借地権消滅時によくあるトラブル
1 建物の朽廃に関するトラブル
存続期間を定めのない旧法借地権は、建物の朽廃によって消滅します。
朽廃の認定は難しく、争いが発生しやすいものです。
最終的には、鑑定結果に基づいて、建物の腐朽損傷が経年によるものであるか、建物の社会的経済的効用が失われたか否かを判断することになります。
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借地上建物の朽廃とは?2 期間満了による更新拒絶をめぐるトラブル
借地人の更新請求・土地の使用継続に対して、地主が異議を述べた場合に、地主の異議に正当事由が認められるかどうかが問題になります。
正当事由をめぐるトラブルでは、正当事由の存否に関する争いが熾烈化するのはもちろん、立退料をめぐっても争いが激しいものとなります。
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借地契約の正当事由とは?また、借地契約が更新されない場合には、建物買取請求の問題へと移ります。
建物買取請求では、建物の時価をめぐって争いになることが多いです。
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建物買取請求権について解説します借地契約の期間が満了した場合でも、地主からの解約には正当事由が必要となり、ハードルが高いものとなっています。
これに対して、借地人からの期間満了による解約は、問題なく認められ、建物買取請求の問題となります。
もっとも、借地契約を締結した際に、期間内に解約できる旨の特約(期間内での解約条項)を定めなかった場合には、地主だけでなく、借地人からの中途解約は認められません。
賃貸借契約は、賃貸人(地主)・賃借人(借地人)の双方の利益になるものと考えられますので、「期間の定めのある賃貸借については、解約権を留保していない当事者が期間内に一方的にした解約申入れは無効であって、賃貸借はそれによって終了することはない」(最判昭48.10.12)とされますので、留意しておきたいですね。
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第4 借地権のトラブルを弁護士に相談する
1 弁護士の視点から見る借地権物件
この記事では、借地権でよくあるトラブルを網羅的に解説しました。
借地権物件だからトラブルが発生しやすいかというと、必ずしもそうではありません。
土地の賃貸借も建物の賃貸借も、所有者である賃貸人の意向は重視されますので、その限りでは賃借人は制約を受けます。
しかし、借地権は、建物築造という借地人の資本投下が前提となっているため、建物賃貸借に比べて長期的な契約となり、建物賃借人よりも借地人の方がより強い保護を受けるものといえます。
最初のハードルの高さはあるかもしれませんが、正しく理解することで、安心して所有権物件だけでなく、借地権物件も購入の検討に加えていただきたいと思っています。
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